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遺族相続の年金型保険「二重課税は違法」 最高裁
2010/07/07 05:36

保険金が年金形式で分割払いされる生命保険を受け取った遺族に対し、相続税と所得税を課税することが認められるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は6日、二重課税に当たり違法との初判断を示した。そのうえで「課税は適法」とした二審・福岡高裁判決を破棄。所得税の課税処分を取り消し、原告側勝訴とした一審・長崎地裁判決が確定した。

 国によるこうした課税は長年続いており、徴収済みの所得税の返還請求や税務実務の見直しなど、大きな影響が出る可能\\\性がある。原告側税理士は「定期預金などにも相続税と所得税の二重課税の問題がある」と訴えており、他の金融商品の課税についても議論になりそうだ。

 課税対象となったのは第一生命保険の「年金払い生活保障特約付き終身保険」。契約者が死亡すると、死亡保険金のほかに一定期間、年金が支払われる。こうした年金型保険を遺族が受け取る場合、国税当局はまず、年金総額の一定割合である年金受給権に相続税を課したうえで、毎年支払われる年金にも雑所得として所得税を課している。

 同小法廷は判決理由で「相続税の対象となる年金受給権と、毎年の年金のうち運用益を除いた元本(現在価値)部分は、経済的価値が同一」と指摘。そのうえで「今回問題となった1年目の年金は、全額が元本に当たる」と判断し、同一資産への二重課税を禁じた所得税法に基づき非課税とすべきだと結論付けた。

 2年目以降に受け取る年金には運用益が含まれるため、運用益部分は所得税が課される可能\\\性があるが、同小法廷は2回目以降については判断を示さなかった。

 判決によると、原告の長崎市の女性(49)は夫が死亡した2002年、死亡保険金4000万円と、10年間分割支給される総額2300万円の年金のうちの初年分として230万円を受領。死亡保険金と年金受給権は相続税の課税対象(各種控除が適用され納税額はゼロ)となり、年金は所得税を源泉徴収された。

 女性は「相続財産には所得税を課さないと定めた所得税法に違反する」として、課税処分の取り消しを求め提訴。一審は06年「同一資産に対する二重課税で許されない」として請求を認めたが、07年の二審は「年金受給権への相続課税と個々の年金への所得課税は別」として一審判決を破棄、原告側が上告していた。

<日経新聞>





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