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武井Jr.対国税 史上最高の税金1300億円かけた「居住地」論争決着へ
2010/12/31 21:27

【衝撃事件の核心】

 1600億円に上る個人としては過去最高の申\告漏れを指摘された武富士元専務の追徴課税処分取り消し訴訟が来年、ついに最高裁で決着する見通しだ。1審は処分を取り消したが、2審では逆に国税側に軍配。その判断を分けたのは、最大の争点でもある元専務の「居住地」についての解釈だ。最高裁では課税処分取り消しの可能\性も浮上しているが、巨万の富が法の穴を巧妙にすり抜けて税負担を免れることに疑問の声も上がっている。年間の贈与税額にも匹敵する巨額の税金がかかった訴訟の行方は−。(花房壮)

 ■1、2審で判断真っ二つ

 「金額の大きさから見ても、来年で最も注目される税務訴訟の一つに違いない」

 来年1月21日に開かれることが決まった最高裁の弁論について、都内の税理士はこう関心を寄せた。

 注目が集まっているのは、会社更生手続き中の消費者金融大手「武富士」の武井保雄元会長(故人)夫妻から平成11年に贈与された外国法人株をめぐり、約1600億円の申\告漏れを指摘された長男で元専務の俊樹氏が、贈与税など約1300億円の追徴課税処分の取り消しを求めた訴訟である。

 過去の巨額申\告漏れでは、パチンコ機器大手「平和」名誉会長の約500億円があったが、それをはるかに上回る規模だ。

 金額の大きさが目立つが、訴訟の争点は贈与時の俊樹氏の居住地が日本国内かどうかの一点に絞られ、非常にシンプルである。外国法人株が俊樹氏に贈与された当時、相続税法では海外居住者に海外財産が贈与された場合は課税対象外とされており、俊樹氏は税務申\告しなかった。

 その後の税務調査で国税当局は実質的な居住地は日本国内にあったとして17年3月に追徴課税したが、俊樹氏は「当時は香港に住んでいたので納税義務はない」と主張、訴訟で争ってきた。

 1審東京地裁は、俊樹氏が贈与前後の3年半の期間について、武富士駐在員などとして約65%を香港で過ごし、職業活動も香港が中心だったと認定。追徴課税処分を取り消す判決を言い渡した。

 これに対し、2審東京高裁は、国内の自宅の家財道具がそのままで月に1度は帰国し、資産のほとんどを移していない点などを挙げ、香港が生活の本拠だったとはいえないとして1審判決を覆した。

 「事実関係は1、2審ともほぼ同じであり、上告審でも新証拠の“隠し球”はないだろう。争点は俊樹氏の居住地の解釈だけに絞られている」

 都内のベテラン弁護士は今後の訴訟の行方をこう語る。

 ■カギ握る「租税回避目的」の評価

 同じ事実関係ながら、1、2審で結論が大きく異なった居住地の認定。その判断の分かれ目になったのが「租税回避目的」に対する評価だった。

 国税側が描く構\図は単純化するとこうだ。武井元会長と俊樹氏が贈与税の負担を回避する目的で、スキームを考案した公認会計士らのアドバイスを受けながら、形式的に俊樹氏が香港に居住した−というものである。

 1審はこの点について、「(俊樹氏が)香港に居住すれば贈与税の負担を回避できることを認識していた可能\性もあり得る」と税負担を逃れようとした俊樹氏の思惑に踏み込んだが、「現実に香港の自宅を拠点として生活した事実が消滅するわけではない」と指摘。国税側の主張については「租税回避意思を過度に強調したもの」として退け、日本国内より長期間に及んだ香港での滞在日数などの客観的事実を「租税回避目的」より重要視したといえる。

 しかし、2審では「租税回避目的」が判決に色濃く反映される。

 まず、居住地の認定について「単に滞在日数が多いかどうかによって判断すべきではない」という最高裁判例を引用。その上で、都内の自宅に家財道具を置いていたことや、国内での滞在日数が多すぎないように日程調整をするなど租税回避目的があったことなどを重視。「香港の自宅は香港での生活の拠点ではあったが、生活全体からみれば、生活の本拠ということはできない」と香港の自宅が“仮住まい”だったと結論づけ、国税当局による追徴課税を適法とした。

 俊樹氏側はその後、上告。それを受け、最高裁第2小法廷は11月、双方の意見を聴く口頭弁論の期日を来年1月に指定した。

 最高裁での弁論は通常、2審の判断を見直す必要がある際に開かれるが、最高裁で仮に追徴課税処分が取り消された場合、還付加算金の額にも注目が集まりそうだ。

 還付加算金は納付から判決確定までの期間に対し、年4%程度の“利息”がつくため、その額は数百億円にも及ぶ可能\性がある。関係者からは「財政難にあえぐ国にとって、巨額の還付加算金は痛手になる」といった声も漏れてくる。

 ■判決に渦巻く賛否

 今回の俊樹氏をめぐる追徴課税処分取り消し訴訟には、関係者の間で賛否両論が渦巻いている。

 都内の税理士は居住地の客観的判断をする上で、「これまで国税当局は滞在日数をよりどころにしてきたはず。租税回避の意図の有無は、課税するかどうかとは関係ない」とし、租税回避目的を強調する国税側の姿勢に違和感を示す。

 海外居住者に対する海外財産の贈与をめぐっては、俊樹氏が贈与を受けた翌12年の税制改正で、贈与をした側と受けた側のいずれかが過去5年以内に日本に居住していれば課税する仕組みに変更された。

 俊樹氏のケース以外にも贈与税回避のために横行していたとされる海外居住スキームについて税制改正で“抜け穴”を埋めた格好だが、この税理士は「問題になるまで改正を行わなかった不作為こそが本当の問題ではないのか」と疑問を呈した。

 一方、「追徴課税は当然」とする声もある。

 多重債務者問題の下地となったグレーゾーン金利を元に巨万の富を築き上げながら納税しない点について、国税OBからは「法の穴をかいくぐる租税回避スキームを利用して贈与税を払わないことが許されれば、一般の納税意欲の減退を招くのではないか」と憤りの声が上がっている。

 巨額追徴課税取り消し訴訟への判断に注目が注がれる中、富裕層による海外での資産隠しは減るどころか、増加の一途をたどっている。

 12月に公表\された国税庁のまとめによると、今年6月までの1年間に相続税の税務調査で見つかった海外資産の申\告漏れは、統計の公表\を始めた13年以降で最高の91億円に上ったことが判明している。生前に資産を海外に移すことで課税逃れを画策する傾向が鮮明化しているとみられ、国税当局も今後、海外資産の税務調査を強化していく方針だ。

 俊樹氏が専務を務めた武富士は、過去に払い過ぎたグレーゾーン金利の返還を顧客が求める「過払い金」問題が負担となり、自力での再建を断念し、経営破綻した。自らに繁栄をもたらした要因が、後に自らの首を締めるという皮肉ともいえる構\図だが、元会長夫妻から俊樹氏に引き継がれた巨万の富の一部の行方は宙に浮いたままだ。

 元会長によるフリーライターへの盗聴事件、過払い金の重圧での経営破綻…。来年にも結論が出るとみられる最高裁判断は、世間をにぎわせてきた武富士の歴史に新たな一章を加えることになるが、一般納税者に与える影響という点でも、目が離せないだろう。

<産経新聞より>

あまり細かい事実関係は知らないですが、ざっくり言えば、常識的に言えばあかんやろーという一方で法的に言えばこれがあかんかったらほとんど全部節税はアウトやろーって感じですかね。
節税は全部アウトにすればわかりやすくていいと思うんですけどね。





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